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2月26日(金)オンライントークイベント「農業と、カフェで生きてます。」を開催しました。 ゲストとして「農家カフェ えすぺり」を運営している大河原ご一家の母・多津子氏と息子・海氏のお二人をお招きし、開業にかける想いや農業との両立などについて、リアルな声を聞かせていただきました。
【ゲスト略歴】
「農家カフェ えすぺり」
https://www.facebook.com/esperi.ichikaraya/
https://www.instagram.com/esperi088/?hl=ja
大河原 多津子 氏 : 就農歴36年
大河原 海 氏 : 就農歴10年(兼業なので実質4年)、カフェ歴5年
大河原一家は、農業歴30年余の両親(母:多津子氏)と息子夫婦(海氏)が農業を行いつつ、「農家カフェ えすぺり」を運営。震災前までは、主に地元の顧客に向け野菜を直接配達するスタイルを取っていたが、震災をきっかけにこれまでの販路が大幅に減少。逆境に立ち向かい販売スタイルを一転するために奮起し、2012年から全国各地への配送をスタートし、SNSを活用することで販路を拡大させてきた。また、翌年2013年に農家カフェ「えすぺり」を開業。カフェ内では、大河原一家や地元農家の野菜や果物をふんだんに使った体に優しいメニューの提供と、その他青果物やパンなどの加工品の販売も行っている。他にもライブやおやこ人形劇、ヨガなど、様々なイベントも不定期で開催している。
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■カフェ開業を決意するまでの家族みんなのそれぞれの想い
−「農家カフェ えすぺり」さんのInstagramを見ながらお話を伺います。こちらの写真は週替わりのランチでしょうか?お野菜はご自身で作られたものですか?
海さん:我々が作ったものもありますが、今の時期は他の農家さんが作った野菜を使うことが多いですね。
−カレンダーがありますね。イベントなどもやられているのですか?
多津子さん:コロナ前はよくイベントを開催していました。今は月2回のヨガ教室くらいですね。
海さん:月通してのイベントを載せています。
−このカレンダーもお父様の手書きなんですよね。
海さん:そうです。父が作っています。
−農業は毎日行っているのですか?
多津子さん:夏の間はほぼ毎日。農業しながらカフェもやってます。夏場は夫と私が朝から収穫して、それを持って私がカフェで仕事をして、夫が戻って畑仕事をしています。
海さん:私は食事の仕込みをしていますね。ランチ後に農業をすることもありますが、日中は基本的にカフェにいることが多いです。丸一日休みというのは正月くらいで、他は何かしらやっています。

−野菜の写真がありますね!
多津子さん:農家仲間が野菜を提供してくれて、「月壱クラブ」と言う野菜やパンを発送するサービスを行っています。これはその中身の写真です。
海さん:このサービスを利用される方の8割は関東のお客さんですね。
−こちらは田んぼの写真?
海さん:稲刈りの写真です。うちは昔ながらの天日干しをしています。手間はかかりますが、味や品質は良くなりますよ。
−お人形の写真が?!
多津子さん:農業とカフェのほかに、人形劇もやっていまして。これはカフェで人形劇をやっている写真です。カフェ以外でも上演したりします。
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■農業に対する想い
−誰が最初にカフェをやろうと提案したのですか?
多津子さん:私と夫です。野菜のお客様が少なくなってしまって、周囲の農業仲間も作ったものが売れないと言っていました。そんな中、みんなが希望を持てる場所を作りたいと思い、2011年から準備して2013年に開店しました。
海さん:私は最初、とても反対していました。両親はおいしい野菜を作ることに関してはプロですが、店舗経営は未経験。うまくいかないと思いました。さらに、初期投資の元手がないので借金をしなくてはならなかったのです。やるなら私は関わらないと言っていましたね。
−その間、海さんは農家をやられていた?
海さん:そうです。2011年に就農してトマトなどを育ててました。
多津子さん:カフェに関しては親戚にも無謀だと言われました。最初はカフェと言うよりも直売所として始めたのですが、夫と私は無農薬農業が当時大きな打撃を受けていたこともあり、前に進むためにどうしてもお店を建てたかった。何がなんでも建てたかったんです。色々な方に出資してもらって、どうにか開業しました。
−資金はどうやって集めたのですか?
多津子さん:国の銀行に融資をお願いしに行ったのですが、1ヶ月かかって書類を作成して提出しても審査が通りませんでした。なので親戚や知り合いに頼み込み、個人の方に貸していただきました。
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■地元農家の協力を得られるまでと、新規顧客開拓のために行ったこと
−今まで、イベントはどんなことをやってきましたか?
海さん:夏など暖かい時にはマルシェを開きました。コロナ前だと、人形劇やサックス・ピアノ演奏などもやっていましたね。よく来てくれるお客様を呼んでクリスマスに食事会などもやりました。
多津子さん:繋がりが繋がりを作ってくれて、プロの演奏家や歌手などが演奏してくださったこともありましたね。

■農業とカフェ運営の楽しさ・大変さ
多津子さん:農業はすごく奥が深くて楽しい仕事です。私たちの仕事ではあまり大きな利益につながりませんが、自分でおいしくて体に良いものが食べたいと思い農業を始めました。お日様や雨風の中で自分の生活が成立していると思うと、いろんなことを考えさせられます。無農薬なので虫取りや草取りは大変だし、思った通りには育ちません。でも、私たちはいつもおいしいものを食べられています。作物が虫に食べられてしまっても、それは自然のことなんだと思っています。
海さん:お客さんと話せるのが楽しいです。カフェで料理を作っていますが、お客さんから味の感想を直接もらえるのが楽しいですし、プラスになっています。
農業は季節性の強い仕事で、忙しい時とそうでない時の波がすごいですね。今の時期は料理に集中したりイベントやお店のことも考えられますが、夏や稲刈りなど忙しい時期はそっちに気を取られてしまって。バランスを取るが難しいんです。個人からお金を借りているため返済に迫られているわけではなく、お店を閉めることもできますが、お客さんが離れないようにお店は常に開けていたいですし。時間のやりくりが一番大変です。

−最初は反対していたと仰っていましたが、本腰を入れるようになったきっかけは?
海さん:結婚ですね。妻がもともと飲食店で定食を作る仕事をしていたので、その影響もあって本格的にランチを始めました。
−震災後にスタイルが変わったと聞いたのですが?
多津子さん:農薬を使わない野菜を週に一度お客様にお届けしたのですが、震災後に放射線測定の結果を伝えたら3分の2のお客様が離れていきました。そこで、他の農家さんの野菜も集めてお店に並べたり、まとめて配送する「月一クラブ」というサービスに変更しました。他の農家さんと協力して対応するお客さんの範囲も広くなりました。
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■カフェを開くには?
海さん:うちは通常のやり方とちょっと違います。事前計画もなく父と母の想いでできた店なんです。作る時に業者さんの言われるものを全部取り込んだため、初期費用がとても掛かってしまいました。その後、少しずつ経費カットしていきました。
公的資金を借りるにしても自己資産の計算など、事前の計画がとても大事になってきます。
そして何より、自分のポリシーが大事。ポリシーがふわふわしてるとお客さんがついてくれません。
−イベントを実施するということは有効な手段ですか?
海さん:新規のお客さんには有効です。しかし、そのイベントを知ってもらうためにもSNSなどを活用していますね。若い方はSNS、年齢上の方は新聞で広告など、手段を分けています。しかし今はSNSが有効ですね。地元のお客さんが一番強いので、口コミも大事だと思います。

【質問】どんなことを求めて来るお客さんが多いですか?平日と休日で客層は異なりますか?
多津子さん:有機肥料で農薬をあまり使っていない野菜を目的に来るお客様が多いです。うちの野菜は鮮度が良いが価格が安いのでそれも売りですね。
海さん:平日は年齢層が高めです。土日は子連れや主婦の方など。うちの店は50~60代のお客様が多いですね。野菜購入のお客様とご飯を食べに来るお客様で客層も違います。年齢層も変わります。
−収入割合はどうなっていますか?
多津子さん:今年は農業の収入と人形劇の収入が半分でした。震災後は農業の収入が落ちて、人形劇と同じくらいに下がったんです。去年はコロナで人形劇の収入も減りました。
海さん:カフェは黒字でも赤字でもない感じです。農業法人もやっているので、その給与もあります。自分の果樹園もあるので、収入源が2~3本ある状態です。母の農業や人形劇の収入もあり、色々あって成り立っています。
【質問】カフェの開業に必要になった資金と広さを教えて下さい。
多津子さん:資金は 3,000万。お店は直売所とカフェで分かれてて、32坪だったかな?新築で建てました。
海さん:更地だったところを借りて新築しました。
多津子さん:店内のテーブルなどの家具は、震災時に木工の仕事をやっていた方が桜の木材が余っているということで、それで作ってもらいました。
【質問】カフェメニューをどのようにして決めているか教えていただきたいです!
海さん:その時にある野菜を見て決めてますね。レシピ本を見たりお客さんとの話で「これ作ってるよ」という話の中で学んで作ることもあります。
【質問】 ブランディングは意識しましたか?
海さん:なるべく農薬や化学肥料を使っていないもの、自然に近く体に良いものをテーマに作っています。三五八という調味料をよく使いますね。

【質問】どの野菜でも簡単に消費できる簡単レシピを教えてください。
海さん:ラタトゥイユやミネストローネなどがオススメですね。
【質問】修行はどこでしましたか。農業も、食事も。
海さん:食事は独学です。本を見たり、失敗しながら学んでいきました。農業は両親から学ぶことが多いです。
多津子さん:私はだいぶ前に調理師免許を取りました。義理の姉が中華料理の店をやっていて、それを手伝っていたのです。
【質問】遠くの若いお客さん、地元の方など、マーケティングはどんなふうに考えましたか
海さん:SNS活用が多いですね。月壱クラブの方には配送する荷物にチラシを入れたり。地元のお客様とはコミュニケーションをとって地道に広げていきました。
【質問】畑はどのくらいの広さですか?
多津子さん:6反です。畑はもっとあるのですが、労働力が夫と私だけなので全部の畑で作ることは難しいですね。
多津子さん:農業はどんな形でもいいので、実際に自分で作物を育ててもらえれば楽しさがわかると思います。芽が出て実がなってという一連の過程を経験して、植物と触れあって収穫した作物を食べるということから始めていただければと思います。手を掛ければそのように野菜は返してくれます。
海さん:農業は手を掛ければ掛けただけ見返りが返ってきます。天候など自然に左右されますが、そこは諦めて心に余裕を持っていただければと。カフェに関しては計画性と想い、方向性がぶれないことが大切です。カフェはやる人の気持ちに惹かれて、お客さんが来てくれるものだと思います。経営もですが、気持ちが大事だと思いますね。

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今回のセミナーは、オンラインから49名という沢山の方にご参加いただきました。農業という職に対する誇りや魅力について語るお二人はとても生き生きとされており、震災以降に”地域の生産者の皆さんが希望を持てる場所を作りたかった”との想いからカフェ開業に至ったというお話がとても印象的でした。ご参加いただいた方の中には今後カフェ経営をお考えの方も多かったため、金銭面のことなども具体的なお話を伺うことができて良かったとのお声をいただきました。
ご参加いただきました皆様、どうもありがとうございました。
弊社が運営しております「たむら暮らし」のホームページでは今まで開催したイベントの開催報告を掲載しております。農業や林業など、田村市でご活躍されている皆様の貴重なお話をまとめておりますので、ご興味がございましたら是非ご覧ください。
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【主催】田村市
本取組は「1次産業による持続的関係人口構築戦略※」の一環として実施しています。
※農林業を通じて地域活性化を図り、市外の方へ田村市の魅力を発信することで、移住・定住者を増やすための取り組み。
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