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2 月16日(火)テラス石森およびオンラインにて、「みどりクラウド」導入講座を開催しました。 講師として、株式会社セラク みどりクラウド事業部 事業部長である持田宏平氏より、農作業や生育・収穫の記録をデータで管理するためのサービスを提供している「みどりクラウド」について、導入するメリットや費用、具体的な活用方法などに関するお話しをしていただきました。
■スマート農業とメリットについて
農業は自然環境下での生産活動であるため、人間がコントロールすることのできない不安定な環境の中で生産しなくてはなりません。
異常高温や気温上昇などが起きると、雑草や害虫の生態が変化したり、土壌が変化したりなど、作物の生育や生産環境へ様々な影響を及ぼします。
さらに昨今、農業は労働力の減少という問題にも直面しています。
どの年代においても農業従事者数は減少しており、さらに60代以上の従事者が多いのが現状です。限られた労働力の中で生産性を高めること。これが今後の日本の農業の課題となってきます。
そこで参考になるのがオランダの農業です。
九州と同じくらいの少ない面積でありながら高い生産性を誇るオランダは、なぜ世界2番目の農業輸出国となったのでしょうか。フラットな地形、台風の少ない気候、緯度が高く夏場でも涼しい環境、ヨーロッパの中央に位置し物流面で有利であることなどの地理的条件もありますが、中でも注目すべきなのは「データを活用した農業」であるということです。
データを集めて共有・分析・活用し、自動化・機械化することによって高い生産効率を生み出す。
こういった部分は日本でも活用できるのではないかと持田氏は提言しています。
生産性の高い農業を実現するためには、計測・記録でデータ化したものを、
可視化:現状把握・リスク回避
共有:人材育成・参入障壁を下げる、ノウハウを伝える
自動化:集めたデータをもとに機械に判断をさせ、労働負荷や労力を低減
比較・分析:過去や他社とデータを比較し、生産の改善や技術向上
することがポイントとなってきます。
農業をデータ化することで、自然環境を正しく把握しリスクヘッジ可能な農業にすること、一人あたりの生産性を向上し機械や道具によって負荷を軽減すること、情報の流注による生産物の付加価値を向上させること。
それを実現できるのが、スマート農業なのです。
■みどりクラウドについて
みどりクラウドは自然の影響を受けにくい生産や、少ない労働力での高い生産性、価格を高めるフードバリューチェーンを目指し、生産支援や流通支援などの面で生産者の皆様をサポートするシステムです。
みどりクラウドの種類・機能は、下記の3つに分けられます。
みどりモニタ・みどりボックス:環境計測・記録、自動環境制御、データ分析
みどりノート:生産計画・記録、作業管理、GAP取得
みどりマーケット:市場状況の把握、天気予報、販路開拓
【みどりボックス】
圃場環境の計測と記録を行います。
湿度、温度、日射量、CO2濃度、土壌環境、養液pH、風向風速、水位など様々なデータを測定し、そのデータをクラウドにて保存することができます。1台で最大36ヶ所観測ができ、初期費用は10万円から。25~30万円前後で利用しているユーザーが多く、おおよそ月額3,000円ほどで使用できます。
時間ごと(過去も含め)に圃場の映像を確認でき、温度などを設定をすれば異常が起きた際に警報で知らせてくれます。積算温度の集計で収穫時期を予想することも可能。気象予報機能もついているので雨風の対策が事前にできます。
環境の可視化により管理工数を削減し、警報機能によりリスクを回避、リアルタイムで圃場環境を把握することができるシステムです。
また、「ふくごう君」という制御盤と合わせて使用することで自動環境制御も可能になります。
【みどりノート】
生産計画や作業記録をすることができます。
事前に生産計画を立てて入力すると、スマートフォンに今日やるべき作業をお知らせ。さらに、農薬を選ぶ際に農薬名と生産する作物を選択すると、それに応じた農薬の使用方法をおすすめしてくれます。
作業もれを防ぎ、安心安全に農薬を使用することで、各種GAP認証の取得にも繋がります。月額500円。
【みどりマーケット】
収集したデータを共有・活用できる無料のアプリです。
データ共有機能で過去のデータや他の圃場、他の生産者との比較をすることができます。
(データ共有は承認した方のデータだけを使用)
また、AIを使った機械学習で画像から収穫時期を予測したり、販路の確保に役立ちます。
みどりクラウドは全国2500箇所で導入済みです。
実際に使用されている方からは「収穫量が20%アップした」、「夜間電照を家で確認できる」、「ブレーカーが落ちた時に警報が来て損害発生を阻止した」、「薬散回数減でコストを削減できた」などの声が届いています。
■質疑応答
・みどりノートは事前計画が必要だというが、事前に計画を立てるのは難しい。日々の記録のノートとして使用可能か?売り上げ記録の管理もできるか?
日々の気づきを記録することもできるが、予定を達成できたかの確認を目的としている。事前に作業計画を立てていただき、しっかり実績を残していくことが必要なのではないかと思う。どれだけ収穫してどこに出荷したかというGAP認証の取得に求められているものを記録できる。売り上げの記録管理機能は今のところない。
・農研 農業試験場の役割は?
システムを開発することはできるが、農業の正解を提示することはできない。各地域の試験場が提示している栽培支援を参考にみどりクラウドを使用していただければと思う。
・初期費用以外でかかるコストはあるか。毎年発生する費用、アプリがバージョンアップした際にも費用がかかるか。
みどりボックスは月々に3,000円の使用料金がかかる。スマホアプリはアップデートしても追加費用はない。ただし料金は改定する場合があるのでずっと同じ値段というわけではないが、今のところは月々に3,000円のみ。
・費用対効果も含め小規模農家でも導入メリットはあるか?
栽培品目により異なる。各生産者の方が持っている課題解決にこのシステムが役立つということが大前提。みどりノートはミスを防ぐことができるメリットがあるので生産方式に関係なく使用していただける。
・今後予定しているアップデートはあるか?
自社でアップデートできるので、スピード感を持ってアップデートすることができる。
・システムを導入したいときはどこに連絡すれば良いか?
みどりクラウドのホームページ(https://info.midori-cloud.net/)から問い合わせ、もしくはタキイ種苗特約店及び全国の代理店(地域の種苗屋・資材屋)から申し込みができる。
スマート農業は言葉が先行してとても難しいものに見えてしまうが、機械を使うというよりもデータを記録して、それをもとにどう行動するかが大切だと持田氏は仰っていました。
システムを利用し、データを活用することで生産者の皆さんが持つ課題への解決につながれば幸いです。
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今回のセミナーはご来場いただいた方が3名、オンラインからは12名の方にご参加いただきました。
ご参加いただいた方からは「スマート農業導入に向けた気持ちが高まった」「こういう農業が今後は必要だ」といった前向きな感想をいただきました。今後もこの田村市でより良い農業を続けられるような情報発信や取り組みをしていきたいと思います。
ご参加いただきました皆様、どうもありがとうございました。
テラス石森では、田村市内の農業の魅力を紹介する様々なイベントを開催しております。今後は、林業のお話し、農業体験の受け入れ、農業カフェなどに関するイベントを開催予定ですので、ご興味がございましたらぜひお気軽にご参加ください。
https://switch-terrace.com/archives/category/event
【講師略歴】
株式会社セラクみどりクラウド事業部事業部長 持田宏平氏
1979年島根県出雲市生まれ。2004年に島根大学大学院生物資源科学研究科修了後、株式会社セラクに入社。
SEとして開発業務を行うかたわら、スマートフォンアプリやIoTサービスの研究開発を行う。
2010年に天ぷら侍、2011年にスマート洗面台、2013年にスマート野菜工場を発表し国内外から注目される。
2014年から農業IoTの研究に着手、2015年に「みどりクラウド」としてサービスを展開。
2019年4月より一般社団法人日本農業情報システム協会理事。

【主催】田村市
本取組は「1次産業による持続的関係人口構築戦略※」の一環として実施しています。
※農林業を通じて地域活性化を図り、市外の方へ田村市の魅力を発信することで、移住・定住者を増やすための取り組み。
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